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高等部第73回卒業証書授与式 部長式辞

マタイによる福音書6章33~34節

まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものはみな添えて与えられる。だから、明日のことを思い煩ってはならない。明日のことは明日自らが思い煩う。その日の苦労は、その日だけで十分である。

数日前の天気が嘘のように、まぶしいほどに晴れ渡ったこの素晴らしい日に、ご来賓、そしてご家族の皆様をお招きし、ここに青山学院高等部第73回卒業証書授与式を挙行できますことを、心より感謝申し上げます。

73期卒業生の皆さん、皆さんの頼もしい成長を喜ぶとともに、この輝かしい門出を祝福いたします。おめでとう。

またご父母やご家族の皆様におかれましては、18年という長きにわたり、陰に日向に共によろこぶこともあれば、時にはお心を痛めつつここまで育ててこられ、思いもひとしおのものがあるとお察しいたします。本日は誠におめでとうございます。

さて、卒業生の皆さんは、まだコロナ感染対策の続く2022年4月、マスク着用のもと、一席ずつ開けて着席という形で、この青山学院高等部の入学式に臨みました。あれから3年が経とうしています。新しい出会いがあり、多くの学びがあり、喜び、悲しみ、友との思い出と共に、皆さんは成長してきました。これまで皆さんが乗り越えてきた苦労や試練もまた、今の皆さんを形成し、これからの人生を歩むための礎を築いてきてくれていることと信じています。

ところで皆さんが生きていくこれからの時代は、これまで以上に情報があふれかえり、何をすべきか、どちらを向いて行けばよいのか、簡単に見失ってしまうあやうさがある時代だと言わざるを得ません。また、感染症が下火になっても、戦争や災害、世界の分断や、格差社会の拡大など、生きていく上で不安や焦りを感じてしまうような状況が続くかもしれません。

しかし悲観的にばかりなる必要はありません。皆さんが、皆さん自身が未来を変えていくことができるからです。そのために、ぜひ世の中の風潮に流されることなく、周りの人の動向に翻弄されることなく、脳を活性化して思考を鍛えてください。そしていつも何が大切か、何が正しいかを、心に問いながら生きて行ってほしいと願います。

一昔前までは20歳を過ぎると脳細胞は死滅していくだけだと言われていましたが、最近の研究ではいくつになっても脳細胞は生まれる、また記憶力も鍛えることができることがわかってきました。コロンビア大学の子の研究に出会ったときは、まだまだ若い人たちには負けてられない、と元気をもらいましたが、やはり若い時のようにはいきません。青春期にいる皆さんは、前頭葉の発達が活発で、思考や判断、自己制御の能力が向上していて、認知機能や社会的なスキルが磨かれているようなので、当然かもしれません。どうぞ若いうちに脳を活性化してください。

脳科学者によると、脳は、新しい体験や経験で活性化されるそうです。またもちろんものを覚えたり、計算をしたり、良い睡眠や運動をすることでも活性化されるようです。脳が活性化されると、脳細胞をつなぐいわゆるシナプスが強固なものとなり、通りが良くなれば伝達物質の量が増えて、接点が増える分、処理できる情報量も増えるという効果があり、それが、記憶力、運動能力、さまざまな能力を向上させることになる、というのです。脳の機能はまだ謎が多いようですが、その機能が解明すればするほど、神の創造の業に畏敬の念を抱きます。

しかし我々の手元には、その活性化を簡単に阻害するものがあります。スマホ等のデジタル機器です。少し前にスウェーデンの精神科医が書いた「スマホ脳」という本が話題になりましたが、その本のメッセージは、端的に言うと「人間の脳はデジタル社会に適応していない」というものです。スマートフォンの使い過ぎによる弊害については皆さんもいろいろと聞いてきました。目の疲れ、頭痛、不眠や集中力の低下、物忘れなど数えだすときりがありません。脳の活性化について言うと、スマホに、脳の代わりに覚えさせたり、計算させたりすることは、脳の活性化のチャンスを奪いますし、また使い過ぎは脳のリラックスする時間を減少させ、過労状態に陥らせます。スマホは、使い過ぎ、あるいは使い方によっては、脳の活性化も簡単に阻んでしまいます。高校を卒業すれば、誰も注意してくれませんよ。スマホなどに脳の活性化を邪魔させない、という意識も持ってほしいと思います。

そして、脳を活性した上で、判断、思考をしていく際に、この学校で学んだ者として忘れないでほしいのは、やはり聖書の言葉です。今日の箇所で、イエスは、まず神の国と神の義をもとめなさい、と言われ、そうすれば、すべて必要なものは与えられる、と約束されています。神の国を求める、つまり「そこに愛はあるのか」、「人のためになるのか」思考を巡らせてください。神の義を求める、とはなんでしょう。周りの意見に流されるのではなく、人の目を意識するのではなく、正しいことは何か、思考を巡らせてください。皆さんがこの3年間、高等部生活、そして毎日の礼拝を通して感じてきたこと、そして考えてきたことを大事に心に携えて歩みを進めていってほしいと願います。神を信頼して進むときに、余計な心配はいらない、とイエス・キリストはおっしゃっています。

皆さんのこれからの人生のために、最後に、アイリッシュ・ブレッシングという祈りを捧げます。

May the road ever rise to meet you.
May the wind be at your back.
May the sun shine warmly on your face.
May the rain fall softly on your fields.
And until we meet again,
May God hold you firmly in the palm of his hand and give you Peace.

あなたの前に歩むべき道が常に開かれるように。
風があなたの背中をやさしく押すように。
太陽があなたの顔を暖かく照らすように。
雨があなたの田畑をしとしとと潤すように。
そしてまた会う日まで、
願わくは、慈しみの神が、あなたをしっかりとその御手のうちに置き給い
あなたに平安を賜るように。God bless you all.

皆さんのこれからの人生の上に、神様の祝福が豊かにあるようお祈りし、式辞といたします。

本日はご卒業、おめでとうございます。

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