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2021年度 2年修学旅行 生徒の感想

 人生最後の修学旅行は、私にとって、一筋の希望でした。入学当初からコロナウイルスと隣り合わせだった高校生活に舞い込んだ、特別な非日常。実施が決まった瞬間から飛行機に乗り込むその時まで、胸のときめきは絶え間なく続き、数々のイベント達も首を長くして私たちの到着を待ってくれているような気がしていました。
 さあ、そんな期待で胸が高鳴る中、ついに、九州の地を踏み締める時がやってきました。長崎の空気を胸いっぱいに吸い込んだら、まずは気を引き締めて平和学習。文字に書き起こすことすらできないほど悲惨な70年前のリアルに、ログブックを書く手の震えが止まりません。ずっしりと感じるのは、自分たちに託された継承の責任の重み。そして、私たちの日常の貴重さ。

 そんな、当たり前が希少な日常を超え、私たちは更に特別な旅の途中にいたのです。本当に、今が奇跡だ、と思いました。特に、グラバー園の夜景貸切は特別なもの。キラキラと輝く夜の街を背景に飛び交う、「写真撮ってください」の声に、思わず緩む頬。長崎を一望しながら青春を感じたあの夜は、まさに宝物です。宝物といえばですが、今回の旅路、3回も虹とご対面しました。青く透き通る空に大きくかかった虹を見つけ、「幸せの虹だね」と言い合ったあの瞬間。その虹の下を走るバスの中、時間を忘れて夢中になった人狼ゲーム。そんな些細な一コマですら、本当に愛おしい宝物です。

 さて、ビックイベントはまだまだ続きます。待ちに待った柳川下りでは、ノリが良い素敵な船頭さんの歌をバックに、長い歴史の中で守り続けられてきた美しい自然を、文字通り「体感」しました。みんなでくっついて橋の下をくぐったり伝説の河童にご挨拶したりと、あたりは一面非日常。しかし、楽しい時間はあっという間なもので、気が付けば二度目の夜。幼少期の写真当てクイズでは、懐かしいあの頃を思い出して笑い合うと共に、自分たち自身の時の流れも感じました。この町に多くの人の時間が流れてきたように、私たちのこの日々も一瞬なのだろうな、と。今が思い出として過ぎていくことの寂しさに思いを馳せずにはいられない夜となりました。

 そんな前夜の寂寥感など吹き飛ばすかのように走り抜けていくトロッコに揺られ、到着したのは阿蘇ミルク牧場。大地の香りを胸いっぱいに吸い込みながら、最後の時をカメラに収めようと必死にシャッターを切りました。濃いほどに早まる時の流れに、どうしようもない程センチメンタルな気分にさせられながら、私たちの修学旅行は幕を閉じていきました。
 しかし、閉幕したのは日常ではありません。みんなと過ごすこの日々は、今もなお、続いています。止まることのない時の流れの中で、このたった一度の高校生活を、71期のみんなと過ごせることが何よりも幸せです。そして、三年間の1ページを彩ってくれたこの修学旅行。その全ての瞬間が、私の宝物です。

 異例の状況下、私たちの健康・安全を大前提として、そのうえで青春を最優先に考えて実施の決断をしてくださった先生方には、感謝の気持ちで一杯です。友人含め、関わってくださった全ての方へ、この気持ちを伝えたいです。心からの、ありがとうを。

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