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「3年生に贈る言葉」英語科教諭

教育/キリスト教教育/礼拝の紹介

「3年生に贈る言葉」

英語科教諭 2017年1月20日

ヤコブの手紙1章22節~25節

3年生の皆さん、2014年4月7日(月)、3年前のあの日のことを覚えていますか。2014年4月7日、あの日の東京地方の天気は晴れ。最高気温は16度。まだ少し肌寒さが残っていましたが、桜前線は東京地方を過ぎ去ろうとしていました。日本では、スタップ細胞の真偽をめぐり、さまざまな議論が交わされていましたし、高等部では、まだ新体育館が建設途中でした。そんな2014年4月7日、このPS講堂で皆さんは入学式を迎えました。

そしてその翌日の1年生オリエンテーションの時に、私は皆さんに65期生で大事にしていきたい3つのキーワードについて話しました。それら3つのこととは、「聴く」「考える」「行動する」、という3つのキーワードです。
これら3つのことはあまりにも当たり前すぎて、日常ではあまり意識することがないと思いますが、今日は、最後の「行動する」というキーワードに焦点を当てて話したいと思います。 「行動する」ということに関して、ここでひとつ、南アメリカの先住民に伝わるお話を紹介したいと思います。それはこんな短いお話です。

森が燃えていました。森の生き物たちは、我先にと逃げていきました。でも、クリキンディという名のハチドリだけは、いったりきたり、くちばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としていきます。動物たちがそれを見て、「そんなことをしていったい何になるんだ」といって笑います。クリキンディは、こう答えました。「私は、私にできることをしているだけ。」
物語はここで終わっています。皆さんはこのハチドリのクリキンディの行動をどう思いますか。燃え盛る山火事に対して、水の滴一滴を垂らしてもなんにもならない、とお話に出てきた動物たちと同じように考えるでしょうか。

私たちの身の回りには様々な問題があふれています。それは、家族や友人との意見の違いからくるトラブルのような非常に身近なものから、地球温暖化、戦争、貧困、格差、などといった深刻な社会問題まで、まさにありとあらゆる問題が私たちの周りには山積しています。
しかしそれらの問題よりさらに深刻な問題があると私は思っています。それは、「これらの問題に対して自分にできることなんか何もない、とあきらめ、思考停止に陥り、人生の傍観者になってしまうこと」だと思います。

あまりにさまざまな問題に取り巻かれている私たちはともすれば、無力感に押しつぶされそうになります。私一人が動いたってどうせ無理、とあきらめてしまいます。
けれど、このお話の中のクリキンディのように、どんな状況においても私たちにできることは、たとえそれがどんなに小さなことでも、きっとあるのではないでしょうか。どうせ無理と、初めからあきらめるのではなく、水の一滴をぽとりと燃え盛る火に落とすことはできるのではないでしょうか。それは世界を救うような大きなことでなくてもよいはずです。あなたにとっての水の一滴、それは、隣に座っている友人の悩みに耳を傾けることかもしれません。LHRの企画をしている運営委員の力になることかもしれません。卒業イベントに力を注いている卒業委員の手助けをすることかもしれません。今日このとき、自分が落とせる水の一滴はいったいなんでしょうか。
それは皆さん一人ひとりの想像力にかかっています。

さて、燃えさかっていたクリキンディのあの森はその後、どうなったのでしょう?森は燃えてなくなってしまったのでしょうか?それとも・・・?
先住民のお話にはこの続きは語られていませんでしたが、このお話の続きを次のように考えた人がいます。

森が燃えているのを見たハチドリは仲間を増やそうと思いました。「それぞれが1羽ずつ仲間を増やすにように伝えて」とクリキンディは呼びかけました。
2回伝わると4羽が、3回伝わると8羽が、10回伝わると1024羽が、20回伝わると100万羽が、そして40回伝わると1兆羽以上のハチドリがやってきて、あっという間に火事を消してしまいました。 残念ながら、現実はこのように単純なものではないかもしれません。そんな理想的に仲間を増やしていくことは難しいことかもしれません。しかしだからと言って私たちが無関心に傍観者のようにそこに立っていてよいということでもありません。

この物語の続きを現実のものとするのはわたしたち一人ひとりの行動にかかっているのではないでしょうか。そして、私一人が何かやったって、どうせ無理、ではなく、私ならこうしてみよう、という一人一人の想像力が世界を変えていくのかもしれません。人生の傍観者にならないでください。たとえ小さくても自分にできることをひとつひとつ行動に移していってください。周りの意見をよく聴き、自分の頭で考えてください。そして一番大事なことは、たとえそれがどんな小さなことであっても具体的に「行動にうつす。」ということです。

18世紀に生きたフランスの思想家ルソーは「生きるとは呼吸することではない。行動することだ。」と述べています。自分の周りで起きている事象をただ「傍観者」のように見ているだけではなく、自分になにができるのか、を主体的に考え、具体的に行動する、それが今私たちに求められていることだと思います。

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