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情報 授業紹介

1年必修 情報Ⅰ

情報Ⅰの授業では,情報技術を活用し,問題の発見・解決の一連の過程で必要な力を身に付けます

これまでの足あと

2003年度: 「情報科」必修 ※ 高等部では1年次に「情報A」( 2単位必修 )設置
2013年度: 科目名を「社会と情報」に変更
2022年度: 科目名を「情報Ⅰ」に変更

 一貫して大切にしてきたことは,ICT つまり Information and Communication Technology の中でも“ Communication ”の部分です.情報とは「自分にも理解でき,相手にも伝わる形になって初めて情報ということができる(「情報Ⅰ」教科書 東京書籍 p.2 より) 」このことを常に意識し,グループ研究に取り組んできました.

 また,複数の情報を結びつけて新たな意味を見いだす力を養うことが目的の一つであり,この教科を学ぶ醍醐味,そして楽しさでもあります.そこで,次のようなスタイルでその醍醐味を味わってきました.

2003~2019 年度 :10クラスを各々会社に見立て,社長・取締役および4支店長×2組織(東日本・西日本)を構成し,コンペティション形式で各支店のアイデアを競い,評価し合う.テーマは,本校で実際に2年次に行く「修学旅行」を前提条件にお客様が行きたくなる旅行プランを紹介する.

2020 年度~ :コロナ渦の影響を受け,修学旅行自体の実施が不安定になったことも伴い,テーマを「SDGs」に変更.

● Project 概要

1学期 :文書作成( Word / Googleドキュメント ) や ファイル操作( エクスプローラー / ドライブ ) の演習も兼ねて,各自がレポートを作成することにより,自分の得意・不得意,興味関心分野を探究します.

( 2022年度 レポートテーマ例 )

① さまざまな教科 ② 著作権 ③ インターネット ③ プログラミング

2学期 :各自が自分自身を見つめた上で[ 現実 ],自分のこうなりたい・こうありたい[ 理想 ]を描きます.この現実と理想のギャップを埋めることが,[ 問題解決 ]であることを意識します( 図1 ).この時,身の回りで困っていること・直したいことなどの問題は,SDGs のいずれかの課題と結びついていないかと意識します.個人の問題を社会の問題と照らし合わせることで,個人が果たす役割や責任についても考えることが狙いです.

 また,SDGsの問題はとても複雑なので,ここでもグループで取り組みます.これは,一人でなく複数で手分けをするというだけでなく,多様性による新たな視野を広げていくことが狙いです.そのため,各自がSDGsの①~⑯のGoalから1つにターゲットを絞り, お互いに,どのような問題意識があるか?その解決のためにどのようなことをしたいか?
それにむけてどのような学びをしているか?などを「企画書」として作成し,学年全員で共有します.


 ここからは,Googleの共有ドライブやClassroomなどを活用し,クラスの垣根も超えて仲間を見つけに行きます.「⑰ パートナーシップで目標を達成しよう」の実践です!2019年度までのカリキュラムでは,会社組織に見立てたロールプレイの中で養っていたコミュニケーション能力を,さらに一歩進め,「メディアとコミュニケーション手段および情報デザインに着目し,受け手にわかりやすく情報を伝える」という「情報Ⅰ」の目標の実践を目指しています.
 実際に2022年度は,発表会にエントリーした44チームのうち8チームが,複数クラスでメンバーを構成しました.

3学期 :SDGs Project発表会はエントリー制です.自らの身近な問題から社会に目を向けるまで,SDGsを軸に探究を進めた結果,「何かを伝えたい!」「仲間を増やしたい!」という段階にまで探究が深く進んだチームが,各クラスに設けられた授業時間内の枠内で発表をします.2019年度までのカリキュラムでは,コンペという設定で,“お客様に如何に買いたいと思わせる企画を立案し伝えられるか“という評価軸であったのを,さらに一歩進め,「聴き手を如何に巻き込むか!」つまり,聴いた人が何かアクションを起こすきっかけになったか?が,評価基準になります.
 したがって,この発表会は発表者も視聴者も全員が主役になります.そこに集うすべての人たちで,その人たちが創っていくこれからの社会を,その人たちが考える“より良い”に近づけることを目指して,考え合います.また,ここに登場する人たちは,これからのVUCA( Volatility(変動性), Uncertainty(不確実性), Complexity(複雑性), Ambiguity(曖昧性))の時代を意識しても,「多様」な人たちで考えるべきだと考えます.そしてそれは実際に挑戦してみると,とても楽しいことでもあることを全員で体感します!
2022年度 公開 SDGs Project発表会
日程: 2023.1.27 ~ 2.28
回数: 2時間/回 ×10クラス × 1~3回( クラスによって異なる )
= 計15回
公開: 多様な視野を広げるために公開授業にしています.

2022年度は,高等部内他教科教員・卒業生だけでなく,外部からもお招きし,30名以上の方々にご参加いただきました.
《 お客様ご紹介 》

- 2003年度のスタートから2019年度までも
日本アイ・ビー・エム株式会社,東京電力株式会社,ソニー株式会社,KDDI株式会社,株式会社ベネッセコーポレーション,富士通株式会社,株式会社オリエンタルランド,東日本旅客鉄道株式会社,東京大学,日本大学,湘南工科大学,慶應義塾湘南藤沢中・高等部,早稲田大学本庄高等学院,東京都市大学付属高等学校,西武学園文理高等学校など,各種企業や他大学・高校の先生方にもご協力いただいておりましたが
- 2020年度からは,オンライン(Zoom)でつなぎハイブリッド開催により
2022年度には,
東京工業大学大学院,株式会社日産オートモーティブテクノロジー,株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ,Asia Africa Investment & Consulting(AAIC) Pte.Ltd.,関西学園 法人本部,株式会社 Inspire High,株式会社二宮書店,Denmark株式会社,なかよし学園プロジェクト,かえつ有明高等学校,名古屋経済大学市邨高校などからも多くご参加いただくことができました.
実際に,名古屋・岡山・広島,さらにシンガポールからも「みんなで一緒に私たちの未来について考える」場に集っていただくことが叶いました.ICT技術をうまく活用すれば,場所を越え,世代を超え,広い視野でモヤモヤをも楽しむことができる!それにより,思いがけないアイデアにめぐり会うことや,サスティナブルに活動を続けていく仲間に出逢うことができる!情報科が目指す本当のDX( Digital Transformation : 進化したディジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革する )を体感することに挑戦しています.

《 SDGs Project 発表会テーマ紹介 》
2022年度にエントリーした44チームのうち,特に今後の発展が期待できるワクワク内容をご紹介します.
「 渋谷を緑に変えるには。 ~ 未来は田んぼに託された ~」
「 子供は可愛いだけじゃない?! ~ パパ・ママ・こどもを救うNPOの提案 」
「 オラと海デート、、、しよ? /// SDGs14 海の豊かさを守ろう 」
「 ハザードマップの普及率を上げる! SALADBOWL SDGs11 住み続けられるまちづくりを」
「 ハロウィーンから紐解く経済効果とその裏に潜む環境問題 ~ 渋谷に位置する高等部の生徒だからこそ ~ 」

いずれのチームも,実際に海や街にゴミ拾いに出向いたり,ボランティア活動に参加したり...主体的に動いてみることにより,「高校生が参加できるボランティア活動が意外と少ない」問題に気づくこともできました.最初はあまり乗り気ではなかったけれど,やればやるほど!知れば知るほど!興味が増し,「知る」ことの大切さを実感することもできました.ハザードマップチームは自分たちでInstagramのアカウント( hazardmap_bousai ← 是非!フォローください! )を立ち上げ,仲間を巻き込む発信を続けています.
2022年度 公開 SDGs Project発表会
日程: 2023.1.27 ~ 2.28
回数: 2時間/回 ×10クラス × 1~3回( クラスによって異なる )
= 計15回
公開: 多様な視野を広げるために公開授業にしています.

(新) SDGs Project ご紹介

授業からの発展 ~ 「お楽しみ」を増やすことを目指して ~

主体性が育まれていくことをワクワクしよう!

「情報Ⅰ」は2単位であるため,授業内で学べることは限られます.従って,授業内でのメッセージをきっかけに各自が「これは使える!」と感じたICT技術を実生活の中で活用することが求められます.

そこで授業では,『 探究ノート 』を作っています.
→ この探究ノートは,Googleドキュメントで作成し,授業では「共有」の方法までを学びますが,その後も,気になった用語をメモし,探究し続ける生徒も多いです.各クラスごとにスプレッドシートで一覧にすることで刺激し合い・学び合うことが可能になりました.高等部では1人1台Chromeブックを持っているので,通学時間などの有効活用も含めて,それぞれの活用スタイルを工夫しています.URLを貼り付けておくことが身につくことにより,探究が深くなるだけでなく,著作権の扱いにも注意を払えるようになります.また,「情報科」の狙いでもある他教科との連携に向けても,この「探究ノート」からの発展が始まっています.

プログラミングは,Microsoft Excel で 『 VBA : Visual Basic for Applications 』
→ 2学期には,プログラミング実習も行います.アルゴリズム的思考を大切にし,頭の体操問題を出し合ったり,授業で説明するのは基本操作のみ!Excel( VBA )のみで作成した,オセロやテトリスなども紹介すると,興味を持った生徒から教え合いが始まります.1学期の調べ学習から,ジグゾー法(学習者同士が教え合いながら学習を進めるアクティブラーニングの1つの手法)も取り入れていますが,小さな先生の活躍は大きな力を持っています!ジグゾー( jigsaw )とは,ジグゾーパズルの由来のように,それぞれの力( ピース )を組み合わせて全体像を描き出すことを表していますが,小さなピースも大きなピースも,個性的なカタチのピースもぴったり当てはまったときの快感は本当に気持ち良い~☆.* ゜また,途中ではなかなかピッタリいかないのも気持ち良さを倍増させる一つ!モヤモヤをもワクワクさせる「お楽しみ方」を学びたいと考えています.
 実際に,SDGs発表会において,VBAを応用してアプリのプロトタイプ版を作成したチームもありました.

メディアとコミュニケーション手段としての『 Gmail 』
→ 高等部では,入学と共に全員にGoogleアカウントが配布されます.最近では,LINEなどのSNSで情報交換をする傾向にありますが,公式的なコミュニケーション手段としても電子メールの利用について学びます.ここでも,教科書上のルールを覚えるだけではなく,お互いにやり取りを実践することにより,なぜそうしたルールがあるのかまで考えます.グループ研究は,先の説明の通り,クラスの垣根も超えて仲間を見つけ,コミュニケーションを取る必要があります.その中で自然と,To / Cc / Bcc なども使い分けながら電子メールのメリットを活用し,データを共有する時の注意事項を考察します.また,この過程をしっかりモヤモヤしたチームの発表は,よりワクワクするような相手の気持ちや行動を動かす「言葉」を意識的に使ったプレゼンテーションになっていくようです.

豊富な対話の機会
2022年度の授業からは,毎回「チェックイン」と呼ぶ「対話」からスタートしています.チェックインは「この一週間でワクワクしたことを報告してください!」のような正解を求めない簡単な会話でリラックスすることが目的ですが,これにより,情報科で最も大切な「伝える」の準備ができます.2学期以降は“自由席”でなるべく多くの人との対話にも試みましたが,これによりお互いに「知りたい」という気持ちが膨らみます.

 これが最近注目されている,「対話 : Dialogue」の精神で,つまり,議論・討論( discussion・debate )のように一方通行で自分の価値観を相手に説得することが目的ではなく,お互いにまず相手の話を“聴き合う”姿勢,この精神の効果が実践の中で実感できます.また「対話」は,一人でもできることが特徴で,毎回のふり返り( Reflection )もGoogleフォームを利用して続けていますが,この効果も予想以上に大きいです.

 Googleフォームに関しては,授業内でもその仕組みを学びますが,「対話」の精神が身についた生徒たちは,自分たちでも積極的にフォームを活用し,より対話を増やしています.またその過程の中で,直接対話ができるメリットも学び取ると,多くのクラスで探究を深める本格的な「対話」が広がります.SDGs Proj. 発表会においても,その効果が成果に現れているチームが数多く見られました.なかには,発表会の中でお客様も交えての「対話」の時間が設けられたクラスもありました.

「情報Ⅰ」から...他教科・学校行事・クラブ活動・日常生活・その先へ~
情報科が目指す最終目標は,最初に掲げた通り
「 情報技術を活用し,問題の発見・解決の一連の過程で必要な力を身につけること 」
つまり,結果( Goal )以上に,過程( Process )を学ぶことを大切にします.その方法( Method )も色々挑戦した方が良いと考えます.モヤモヤをもワクワクしたいのは,そのためです!
2022年度は,特に
「 やってみなはれ,やらなわかりまへんで ( サントリーグループ創業者 鳥井信治郎 ) 」
「 こけたら立ちなはれ,立ったら歩きなはれ ( パナソニック創業者 松下幸之助 ) 」など
先人方の言葉を合言葉にしながら,授業を進めました.そして,授業は,結果( Goal )ではありません!

ここからがスタートです!

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2012/3/21(水)東京大学にて株式会社ベネッセコーポレーション主催「新しい学びフェスタ」のポスター発表部門に本校から3チーム(1・2年合せ 計7名 テーマは次の3つ ①『私、社長やってみました!』 ②『(旅行会社)あぉやまんJAPAN110で行く一味違う修学旅行』 ③『私は、これで、生徒会活動を始めました』)が参加.各学校での学びの深さや活動の魅力を伝えることを目的に行われた発表で,テーマ①のチームは「最優秀賞」を受賞しました!

2015/3/22(日)聖学院高等学校にて開催された同企画に,1チーム(1年5名)が『脱、受け身。』というテーマで参加し,積極的な自らの新しい学びを探究しています.

2020/8/8(土)ベネッセSTEAMフェスタ2020・夏に2年1名が『 Eco Visualization ~ エコ活動(環境保全活動)の可視化ツールの作成 ~ 』というテーマで参加.この回からオンライン開催となったことで,社会人や大学・企業などの専門家も加わり,地方の中高生もより多く集まり,実社会の課題解決につながる意見交換ができる機会となりました.本校から参加した生徒は,2年生になっていましたが,まさに主体的に取り組み,ここで作成した可視化ツール( スマホで動かすアプリ )は,独学!SDGsも,彼が1年生の時の「情報Ⅰ」では未だテーマではありませんでしたが,こうした機会から興味関心が加速し,この後も,2020.10.3~4 School Maker Faire 2020 Online にノミネートされ参加.2020.11.28 第1回松下幸之助杯スピーチコンテスト( オンライン決勝大会 )進出などをはじめとする多くのチャンスを楽しまれていました!大学へ進学後も継続されているようです.

2021/3/14(日) ベネッセSTEAMフェスタ2021には,先輩に刺激を受けた1チーム(1年4名)が『 Organic Cycle 』というテーマで参加しました.この学年から授業でもSDGsをテーマにしていましたが,食品ロスなどを中心にアレンジレシピ作成やコンポストの研究などにも楽しそうに取り組んでいました.授業終了後に,課題解決の方向性にむけて,新たなチームを編成し,このイベントに参加していたのも特徴です.

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以上は,「情報Ⅰ」の授業後,本当にスタートしはじめた,ほんの一例です.

大小に関わらず,ここで経験できた過程( Process )での様々な方法( Method )を他教科~・・・~その先へ活用していくことが,繰り返しになりますが,この教科の願いです.
今年度も授業と並行しながら,お小遣い帳をExcelにしてみた!クラブの名簿でvlookup関数利用してみたらとても便利になった!という声が聞こえてきました.
「 世の中に失敗というものはない。チャレンジしているうちは失敗はない。あきらめたときが失敗である。 ( 京セラ・第二電電創業者 稲盛和夫 ) 」

この素敵な言葉も授業で合言葉にしていたものです.

これまでも持ち込み可能での筆記試験を行っていましたが,2022年度からは定期試験を止めました.本当に必要な力を身につけるためには時間をかけても良いと考えるからです.時には,時間配分を間違えてしまうこともあるでしょう...その時は,次のあなたの計画性について更にしっかりモヤモヤしましょう.大切なのは
「 いま・ここで・あなたが 」するべきこと( やってみようと思うこと )は,しっかり丁寧に向き合うことです!

AI( 人工知能:Artificial Intelligence )の進化も目覚ましい今,だからこそ,モヤモヤできること・疲れてしまうことは「人間」の特徴でもあると考えます.そのような人間だから,人間だけでなく地球全体の様々なモノ・ゴトを考慮して,より良いAIを進化させられると考えたい.そして,その「より良い」は,時代・文化・立場など様々な要因によってその価値も異なってきます.だからこそ,多様な視野でモノ・ゴトを見ていきたい.

SDGs の頭文字は,Sustainable!つまり,持続可能です.モヤモヤこそ,次へのワクワクへつながる!疲れてしまうからこそ,休むことの大切さを知っている優しいシステムを考えられる!
そんな人たちをこれからもたくさん育むことが情報科の目標です.
毎回の授業おわりに,「おつかれさま」の代わりに
「お楽しみさま~」がもっと!もっと!増えていくことが願いです!

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