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高等部第71回卒業証書授与式 部長式辞

ローマの信徒への手紙8章 28節

神を愛する者たち、つまり、ご計画に従って召された者のためには、万事が共に働いて益となるということを、私たちは知っています。

初夏を思わせるようなあたたかな日差しが、この高等部校舎を暖かく包みこむかのように感じられる今日この日、ご家族の皆様を4年ぶりにPS講堂にお招きし、ここに青山学院高等部第71回卒業証書授与式を挙行できますことを、心より感謝申し上げます。

71期卒業生の皆さん、皆さんの成長を喜ぶとともに、この輝かしい門出を祝福いたします。おめでとう。

さて、皆さんは、2020年4月に、この青山学院高等部に入学し、あれからもう3年が経ちました。オンラインで始まり、入学式は6月。時差登校、分散登校と、不安の中に高等部生活が始まりました。思い描いていた高校生活とはかけ離れた、当たり前のことが当たり前でなく、思い通りにならないことをたくさん経験し、やり場のない不満や怒りも感じました。しかし、今、どうでしょう。皆さん、この3年間を立派に生き抜いて、そして乗り越えて今日ここにいます。1,2年生の時は、多くの制限の中で、なんとか行事を実現する先輩を見て過ごし、最高学年になった今年度は、できっこないという考えは毛頭はなく、できることを自ら考え、見極め、実行して、後輩たちの手本になったのだな、と改めて昨日の送別会で知ることができました。皆さんを、本当に誇りに思います。そしてこれらの経験を通して、中心になった人たちだけでなく、周りで協力してきた人、参加したり、見たりしてきた人たちもみんな、どんな時でもできることがある、そして成し遂げることができる、ということを目の当たりにしたのではないかと思います。本当によく頑張ったと思います。

皆さんが生きていくこれからの時代は、情報が溢れかえり、何が大切か簡単に見失ってしまうような難しい時代にますますなっていくでしょう。感染症が終わっても戦争や災害、心配や憂いは今後も続くかもしれませんが、これまで皆さんが乗り越えてきた苦労や試練も今の皆さんを形成し、これからの人生を歩むための強さを与えてくれているはずだと信じます。

昆虫の蝶は、世界で20,000近い種類があるそうですが、ご存知のように幼虫からさなぎ、そして成虫になる完全変態の昆虫です。さなぎの中はどうなっているのか、なにが起きているのか、知っているでしょうか。あのさなぎの中はドロドロで、「アポトーシス」という現象によって、古くなって必要なくなった細胞が死に、その死んだ細胞が、もともとプログラムされた成虫、つまり蝶になって飛び立つために必要な羽や足の組織になる細胞の栄養になり、蝶として飛び立つ準備がなされているのだそうです。そして準備が整うと羽化し、それぞれきれいな蝶となり飛び立つわけです。私がなぜか昔から気に入っているアサギマダラという蝶は、渡り鳥ならぬ渡り蝶で、2000㎞以上移動するという特徴を持っているのですが、それも多様な蝶の中で、アサギマダラという蝶にプログラミングされていて、さなぎの中で熟成され、飛び立つわけです。創造主なる神の生命の神秘を感じざるを得ません。

私たち一人ひとりも神からそれぞれ賜物や使命が与えられています。また時として、動きを止められ、じっとしていなくてはならない時があり、自分を顧みる時があります。ある意味、コロナの期間は、蝶が飛び立つ前のさなぎのような時期だったのかもしれない、と思わされます。蝶が美しく羽ばたくために、さなぎとしてのプロセスが必要なのと同様に、アポトーシスによって、不必要なものをそぎ落とし、私たち一人ひとりに与えられたユニークな賜物を本来の輝きを放って飛び立つためには、このような時間が必要なのかもしれないと思うからです。

先ほどの聖書には、万事が共に働いて益となる、とあります。目の前にはつらいこと、無意味とも思える試練だとしても、神を信頼して歩むときに、実はそれらすべての経験が共に働いて、自分の、あるいはみなにとって意味のあることにつながる、あの時があるから今がある、あの経験はこの時のためだったのでは、と思える経験をする、という約束です。

卒業式のことを英語では、Commencement という言い方をします。これは「開始」を意味します。つまり卒業とは、一つのステージを終え、新しいステージを始める、ということも言えます。

皆さんのこの3年間の一つひとつの経験が、成長の糧、人格形成の糧となっていると私は信じます。当たり前でなくなったから工夫したこと、うまくいかないから模索したこと、制限があるから考えたこと、その他多くの学びや経験を胸に、新しい歩みを進めてほしいと思います。

どうぞ私たちを造り、愛し、私たちに賜物を与えてくださっている神様が、これからの人生も皆さんと共にいてくださり、万事を益としてくださるという約束に信頼し、様々な困難に会っても、自分の賜物や使命を果たすための新たな挑戦や夢に向かって、羽を広げ、飛び立っていってほしいと願います。

最後に、アイリッシュ・ブレッシングという祈りを捧げます。

May the road ever rise to meet you.
May the wind be at your back.
May the sun shine warmly on your face.
May the rain fall softly on your fields.
And until we meet again,
May God hold you firmly in the palm of his hand and give you Peace.

あなたの前に歩むべき道が常に開かれるように。
風があなたの背中をやさしく押すように。
太陽があなたの顔を暖かく照らすように。
雨があなたの田畑をしとしとと潤すように。
そしてまた会う日まで、
願わくは、慈しみの神が、あなたをしっかりとその御手のうちに置き給い
あなたに平安を賜るように。

God bless you all.

皆さんのこれからの人生の上に、神様の祝福が豊かにあるようお祈りし、式辞といたします。
本日はご卒業、おめでとうございます。

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